インデックス投資をコツコツ続けてきた方なら、「資産形成の方法」については十分に理解されていることでしょう。S&P500やオールカントリーなど、広く市場全体に分散されたインデックスファンドへの積立投資は、資産形成において効率的な手段として、多くの投資家に支持されています。
しかし、投資のゴールは「お金を増やすこと」だけではありません。いよいよ迎えるリタイア後──その蓄えた資産を「どう使っていくか」、つまり“資産の取り崩し方”が、次なる大きなテーマになります。
老後に向けた不安──2つの懸念
インデックス投資で資産が増えたとしても、以下のような不安を感じる方も少なくないでしょう。
- リタイア直後に暴落が起きたら、資産は大丈夫?
- 長生きして、自分が亡くなる前に資産が尽きたらどうしよう?
高配当株であれば「配当金で生活」というイメージがしやすい一方で、インデックス投資は配当よりも値上がり益(キャピタルゲイン)を重視する設計のため、取り崩し方に工夫が必要です。
そこで今回は、資産寿命を延ばしながら取り崩すための考え方、「4%ルール」について、丁寧にご紹介します。
4%ルールとは?──インデックス資産の取り崩し方
「4%ルール」とは、築いた資産を年4%ずつ取り崩しても、長期的には資産を維持できるという考え方です。
このルールには、2つの取り崩し方法があります。
① 引退時点の資産 × 4%(定額で取り崩す方法)
毎年「同じ金額」を取り崩すシンプルな方法です。たとえば、引退時に1億円の資産があるなら、年間400万円(毎月約33万円)を取り崩して生活費に充てるイメージです。
定額方式の安全性──トリニティ・スタディの研究結果
アメリカのトリニティ大学が行った研究(通称:トリニティ・スタディ)では、次のような結果が示されました。
- 調査期間:1926年〜1995年(70年間)
- ポートフォリオ:株式50%・債券50%
- 年4%を定額で取り崩し続けた場合…
- 30年後に資産が残っている確率は96%
- 多くのシナリオで、資産が減るどころか増加(中央値では8倍に)
つまり、資産を取り崩しながらも、残った部分が運用され続けるため、長寿リスクや暴落に対する一定の備えになるのです。
計算例:
初期資産:1億円
年取崩し額:400万円
運用利回り:5%(税引前)
1年目:1億円 × 5% = 5,000,000円(運用益)
取崩後:1億 + 500万 - 400万 = 1億1百万円
※あくまで一例ですが、資産全体が減らない、または増える可能性があることが分かります。
② 毎年の資産残高 × 4%(定率で取り崩す方法)
その年の資産評価額に応じて、4%を取り崩す方法です。資産が減っている年は取り崩し額も減るため、資産を長持ちさせるという意味では理にかなっています。
バートン・マルキールの理論──「減らさずに使う」
著書『ウォール街のランダム・ウォーカー』では次のように述べられています。
- 株式の平均リターン:7%
- 債券の平均リターン:4%
- 株50:債券50のバランス型なら平均5.5%
- 仮にインフレ率が1.5%なら、実質利回りは4%
→ つまり、年4%取り崩しても資産は減らない
この方法の魅力は…
- 資産の寿命を延ばしやすい
- 市場が成長していけば、むしろ資産が増える可能性も
詳しいシミュレーションや実践例については、こちらの記事で紹介しています:
👉 インデックス投資の出口戦略 ~「定率売却」で資産を長持ちさせる方法とは?
定額と定率、それぞれのメリット・デメリットまとめ
取崩し方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
定額(資産×4%) | ・毎月の生活費が安定 ・トリニティスタディの裏付けあり ・証券会社で自動化可能(楽天証券、SBI証券) | ・暴落時も同額を取り崩すため、資産が早く減るリスク |
定率(残高×4%) | ・資産寿命が長くなる傾向 ・『ウォール街のランダム・ウォーカー』の裏付けあり ・資産が増えれば取り崩し額も増える ・証券会社で自動化可能(楽天証券) | ・収入が不安定になりやすい ・資産が減れば、取り崩し額も減る |
まとめ──インデックス投資家にとっての「安心の出口戦略」
インデックス投資で築いた大切な資産。老後には、ただ切り崩すだけではなく、「運用しながら取り崩す」という視点を持つことで、長く安心して使い続けることができます。
「減らさずに取り崩す」という4%ルールは、市場の成長を信じる投資家にとって、人生100年時代の心強い味方となるはずです。