【受験生応援歌】自分を信じて 今、踏み出そう
受験という節目は、ただ試験を受ける一日ではなく、
これまで積み重ねてきた努力や迷い、
そして何度も立ち上がってきた時間そのものが問われる瞬間なのかもしれません。
今回は、先生の立場からの受験生への応援として、
一つの短編小説と、その物語の余韻から生まれたオリジナル曲を制作しました。
思うように伸びない成績に悩みながらも、
そばで見守り続けた先生の支えによって、
再び前を向いて歩き出した一人の受験生。
物語では、試験当日の朝、
試験会場の前で交わされる静かな会話と、
そこに流れるあたたかな時間を描いています。
そして楽曲では、その瞬間に込められた
励ましの想いと、積み重ねてきた日々の重みを、
音と言葉に託しました。
まずは、小説からお読みいただき、
その後にオリジナル曲とともに、
この物語の余韻を感じていただけたら嬉しく思います。
【短編小説】 自分を信じて 今、踏み出そう
冬の朝は、凛と澄んでいる。
第一志望の大学の正門前。
夜の冷え込みを残した石畳はうっすらと白く、朝日を受けて静かに光っていた。
吐く息は白くほどけ、冷たい空気が頬を刺す。
私は門の脇に立ち、流れていく受験生たちを見つめていた。
緊張と希望が入り混じったこの空気を、毎年胸いっぱいに吸い込む。
やがて、人の流れの中に、ひときわ見慣れた背中を見つけた。
受験票を胸の前でぎゅっと握りしめている。
緊張のせいか、少し力が入りすぎているようだ。
——ここまで、本当によく来た。
私は歩み寄り、そっと声をかける。
「おはよう。寒いな」
彼ははっとしたように振り向き、目を丸くした。
「先生……」
その声には、驚きと安堵が混ざっている。
私はポケットからカイロを取り出し、その手に包むように渡した。
「冷え切ってる。お守り代わりだ」
彼の指先は氷のようだった。
朝日が二人の足元に長い影を伸ばしている。
「英語がなかなか伸びずに相談しに来た日のこと、覚えてるか」
私が言うと、彼は小さくうなずいた。
夏の夕方。
テストの結果を握りしめ、カウンセリングルームに来た姿が浮かぶ。
蝉の声がうるさいほど響き、夕焼けが壁を赤く染めていた。
「英語、単語や文法はやっているつもりなんですが、点数につながらなくて…。何が足りないのか教えてほしいです。」
声は震えていた。
「伸びないと感じると、つらくなるよね。
でも、今あなたがしている勉強は、ちゃんと力になっているよ。
英語は特に、成果が見えるまでに時間がかかる教科なんだ。
ある日突然、読めるようになったり、聞き取れるようになったりする。
今はまだ、その“芽”が土の中で育っている時期なんだよ。
大切なのは、
“できていない自分”を責めることじゃなくて、
“毎日向き合っている自分”を認めてあげること。
もし点数に結びつかないなら、
それは努力が足りないんじゃなくて、
少しやり方を整えるタイミングが来ているだけ。
一緒にどこでつまずいているか見ていこう。
あなたはもう、ちゃんと前に進んでいるからね。」
彼はあのとき、何度も涙をこらえるようにうつむいていた。
「……信じて、続けてみます」
そう答えた声はかすれていたけれど、
その目には、消えかけながらも確かな決意が宿っていた。
それからの日々、
自習室の隅で黙々と長文を読み返す姿。
単語帳を何度も開き、赤シートを外しては確かめる姿。
模試の成績が思うように上がらず、
それでも投げ出さずに机に向かい続けた背中を、
私は何度も見てきた。
少しずつ、ほんのわずかずつ。
けれど確かに、彼の英語は変わっていった。
読めなかった文章が読めるようになり、
解けなかった問題に手が伸びるようになった。
そして最後の模試で、
初めて目標の点数に届いたとき。
彼は信じられないように答案を見つめ、
ぽつりとつぶやいた。
「……本当に、芽が出たんですね」
私はただ、静かにうなずいた。
——この一年が、無駄だったはずがない。
冷たい朝の空気の中で、
彼の背中は少しずつ遠ざかっていく。
不器用でも、遅くても、
逃げずに歩いてきた道。
その道の先に、今日がある。
朝の光はやさしく門を照らし、
まるで彼を包み込むように広がっていた。
私は小さく息を吐き、心の中で願う。
どうか、自分を信じて。
その背中が見えなくなるまで、
私はそこに立ち続けていた。
【オリジナル曲】 自分を信じて 今、踏み出そう
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