こんにちは。毎日暑いですね。
投資の世界では、日中の値動きばかりに目が行きがちですが、「夜のうちにこっそり値が動いている」ことをご存知でしょうか?
この現象はオーバーナイト・リターン(overnight return)と呼ばれ、前日の取引終了時点から翌日の取引開始時点までの値動きを指します。今日は、このオーバーナイト・リターンを使った投資戦略について、過去10年間の日経平均とETFのデータから、その実態を探ってみました。
オーバーナイト・リターンとは?
端的に言うと、
前日の終値から翌日の寄り付きまでの値動きの割合
です。計算式はこうなります。
Overnight Return = (翌日寄値 − 前日終値) ÷ 前日終値
例えば、前日終値が10,000円で、翌朝の寄り付きが10,100円なら、オーバーナイト・リターンは+1.00%です。
なぜ夜のうちに株価が動くの?
この現象が起こる理由はまだ完全にはわかっていませんが、有力な説明をいくつか紹介します。
- 夜間に出る重要ニュースの影響
企業の決算発表や経済指標、政治・地政学リスクなどの大きな材料は、市場が閉まった後に発表されることが多いです。
この好材料や悪材料が翌朝の寄り付き価格に反映されるため、夜のうちに株価が動きます。 - 海外市場の動向の反映
日本市場は、特に米国市場の影響を強く受けます。
米国の株価指数が日本の夜間に上昇すると、その流れを受けて日本の寄り付き価格も高くなる傾向があります。 - 機関投資家の売買行動
一部の機関投資家や短期トレーダーは、日中にポジションを閉じて夜間に持ち越さない傾向があります。
つまり日中は売り圧力がかかりやすく、市場が閉まると「売りがない」状態になり、好材料が出れば買いが優勢となるのです。
また、年金や大型ファンドの買い注文は市場開始直後に集中して執行され、寄り付きが上がりやすい傾向もあります。 - 先物市場の動き
株式市場が閉まっていても、先物市場は夜間も動いています。
先物価格が夜間に上昇すれば、翌日の現物株の寄り付き価格も連動して上がる傾向があります。
日経平均株価の10年データで実証
では、実際の数字を見てみましょう。2015年8月10日から2025年8月9日までの10年間で、日経平均の毎日の値動きを分析しました。
※直近データで検証したかったため、期初日を8/10としています。
期間 | 当日初値→終値 | 前日終値→翌日初値 (オーバーナイト) |
---|---|---|
2015/8/10-2016/8/9 | 0.999027995 | 1.000278903 |
2016/8/10-2017/8/9 | 1.000220966 | 1.000485641 |
2017/8/10-2018/8/9 | 0.999864515 | 1.00072634 |
2018/8/10-2019/8/9 | 0.999864512 | 0.99982401 |
2019/8/10-2020/8/9 | 1.000124024 | 1.000295366 |
2020/8/10-2021/8/9 | 1.000174382 | 1.000777658 |
2021/8/10-2022/8/9 | 0.999725793 | 1.000367143 |
2022/8/10-2023/8/9 | 1.00036039 | 1.000254094 |
2023/8/10-2024/8/9 | 1.000299733 | 1.000140433 |
2024/8/10-2025/8/9 | 0.999634586 | 1.001179955 |
10年間の合計平均(率の単純平均)は、
- 「当日初値→当日終値」は、約0.99992985倍(マイナス)
- 「前日終値→翌日初値(オーバーナイト)」は、約1.000433216倍(プラス)
つまり、日中は減少傾向であるのに対し、夜間のオーバーナイト・リターンは2018年以外はプラスとなり、10年間トータルで約0.0433216%の上昇を示しています。
ETF(1321)での検証も同様の結果
実際に売買できるETF「1321(NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信)」でも、同じ期間で検証しました。
期間 | 当日初値→終値 | 前日終値→翌日初値 (オーバーナイト) |
---|---|---|
2015/8/10-2016/8/9 | 0.999019907 | 1.000292611 |
2016/8/10-2017/8/9 | 1.000006208 | 1.000716533 |
2017/8/10-2018/8/9 | 0.999974018 | 1.000632864 |
2018/8/10-2019/8/9 | 0.99983415 | 0.999862483 |
2019/8/10-2020/8/9 | 1.000415534 | 1.000032696 |
2020/8/10-2021/8/9 | 0.99986624 | 1.001099756 |
2021/8/10-2022/8/9 | 1.000065675 | 1.000035723 |
2022/8/10-2023/8/9 | 1.000279717 | 1.000356552 |
2023/8/10-2024/8/9 | 0.999991124 | 1.000457239 |
2024/8/10-2025/8/9 | 1.000162127 | 1.000683223 |
10年間合計平均(率の単純平均)は、
- 当日初値→終値:0.999960819倍(マイナス)
- 前日終値→翌日初値:1.000417756倍(プラス)
指数とほぼ同様の傾向が確認されました。
実際にこの戦略をやるとどうなる?
では、具体的に試算してみましょう。
- 100万円分のETFを前日終値で買い、
- 翌日の初値で売る
平均的に1日で約1.000417756倍になるということは、
1日で約417円の利益です。
年間の取引日数を243日(2024/8/10〜2025/8/9の営業日数)とすると、
年間利益は約101,515円となり、利回りは10%超え!
楽天証券なら国内ETFの売買手数料は無料なので、理論上はコストなしでこの利益が見込めます。
でも…本当に実用的?
ここで冷静に考えたいのが、以下のポイント。
- 取引ごとに注文(買い注文、翌日売り注文)を毎日設定しなければならず、手間がかかる(売り注文は、トレイリング機能を使えば出来そうですが)
- 100万円を元手に投資しても、利益は1回あたり417円程度なので、注文にかかる手間や精神的負担とのバランスは微妙
- そもそも、実際には想定通りの値動きをする保証はない
つまり、「机上の理論としては面白いけど、現実の投資で実践するには結構な根気と負担が必要」なのが正直なところ。
まとめと今後の展望
オーバーナイト・リターンは、理論上は年率10%超えの利益を生む可能性があります。
ただし、実際に売買を繰り返すには注文設定の手間や市場の不確実性もあり、すぐに現実的な投資戦略とは言いにくい面もあります。
全自動で行えるなら、少額でエンタメとして行ってもよいかなと思いますが、現時点ではあまり現実的ではないのかなと思いました。
さらに深堀した検証結果を公開しました
👉火曜朝だけで年率12%越え!?前回検証の“オーバーナイト・リターン”をさらに深堀りし、特定条件の時はとんでもない結果が見えてきた