安野貴博氏が語るAGI時代に備える6つの現実策
先日このブログでは、イーロン・マスク氏による、AGI(汎用人工知能)へのコメントを紹介しました。
👉イーロン・マスク氏が語る「AIの進化とAGIの実現」
今回は視点を日本に移し、安野貴博氏──チームみらいの党首であり、AIの専門家──が示した、国民保護のための提言を紹介します。
そもそもAGIって何?──「優秀な頭脳を誰でも使える世界」
AIと聞くと、多くの方は
「文章を書くツール」
「画像を作るサービス」
を思い浮かべるかもしれません。
でも、それらは“特定の作業だけが得意なAI”です。
一方、AGI(汎用人工知能)は違います。
安野氏は、AGIを
「人間がやっている知的作業のほぼすべてを、同じレベルか、それ以上でこなせる存在」
と説明します。
たとえば──
- 今日は弁護士として契約書をチェックし
- 明日は研究者として新薬の仮説を立て
- その翌日は、経営者として会社の戦略を考える
こうした分野をまたぐ知的作業を、休まず、感情に左右されず、しかも低コストでこなす。
それがAGIです。
安野氏がコメントしていたのは、
「インターネットやSNSの普及をはるかに凌駕し、蒸気機関や電気の導入による産業革命に匹敵するインパクトを持つ」という表現でした。
かつて電気は贅沢品でしたが、今ではスイッチを押せば当たり前に使えます。
AGIも同じように、「高度な頭脳」が誰でも使える資源になる可能性がある、というわけです。
AGIは明るい未来か、それとも暗い未来か──両方が同時にやってくる
安野氏は、AGIの未来を楽観一色では語りません。
むしろ、「良いことと、厄介なことが、同時に、しかも急激に起きる」と指摘します。
期待される“明るい未来”の具体例
たとえば──
- 医療
新薬の候補をAGIが一気に設計し、治らなかった病に道筋が見える - 交通
自動運転が当たり前になり、高齢者や地方の移動が楽になる - 労働力不足
建設・介護・保育など、「人が足りない現場」をAIとロボットが支える
人口が減り続ける日本にとって、これは大きな希望です🌱
しかし同時に、5つの「現実的なリスク」
AGIの到来に伴い、既存の社会システムを根底から揺るがすリスクについても触れられています。
① エネルギーが足りなくなる
AGIを動かすには、膨大な電力が必要です。
安野氏は具体的に、
「今の電力計画のままだと、AI利用による需要増加で約15%足りなくなる可能性がある」
と述べています。
つまり、便利になるほど、電気が足りなくなるということです。
② ホワイトカラーの仕事が置き換わる
「AIに奪われるのは単純作業だけ」
──そう思われがちですが、安野氏は違う見方をします。
- プログラマー
- 翻訳者
- 会計士
- 弁護士
むしろ頭を使う仕事ほど影響が早い。
これは、静かだけれど、重たい指摘でした。
プログラムのコード生成においては、既にAI利用が当たり前の世界になっているとの推測もあります。
③ 国の安全保障のルールが変わる
戦略決定や電子戦へのAI導入により、従来の「相互確証破壊(MAD)」による核抑止力が機能しなくなる、あるいは国家間の衝突リスクが高まる可能性があります。
戦争が“速く、見えにくく”なる。
これは私たちの生活とも無縁ではありません。
④ お金と富が極端に集中する
AGIを持つ企業は、
ほとんど人を雇わずに、莫大な利益を生むことができます。
結果、
「働いても豊かにならない人」と
「AGIを持つ側」の差が、かつてないほど広がる恐れがあります。
⑤ 「自分は何の役に立つのか」という不安
安野氏が慎重に語るのが、ここでした。
努力して勉強する
積み上げて上達する
仕事を通じて認められる
──そうした体験そのものが揺らぐと、人は生きがいを見失うかもしれない。
だからこそ必要な「6つの備え」
安野氏の提言は、「反AI」ではありません。
AGIの社会的影響に備え、以下の6つの分野で国家レベルの準備を加速させる必要がある。
● 巨大AI企業への課税と国際協調
AGIによって莫大な利益を得る上位0.001%の企業に対し、適切な課税を行い、社会への再分配を確実にする。
- タックスヘイブン対策: 実行税率を不当に下げるスキームを防ぐため、国際的な足並みを揃えた課税ルールの構築が必要(囚人のジレンマの回避)。
- 対ビッグテック外交: 外務省レベルでの交渉窓口を強化し、巨大企業との直接交渉力を高める。
● 教育システムの抜本的改革
- マイナーアップデートの導入: 10年に1度の指導要領改定を待たず、1年単位で内容を更新する仕組みを構築する。
- 教育のデジタル化: 教科書を電子化し、最新のAI知見を即座に教育現場へ反映させる。
● AIセーフティへの投資
AIのリスクを正しく把握し、安全性を担保するための研究を強化する。
- 活用のための安全担保: 「この範囲なら安全」というお墨付きを与えることで、民間企業が安心してAIを導入できる環境を整備する。
● 機動的な再分配システムの構築
大量失業や環境変化に即座に対応できる社会保障制度を準備する。
- 給付付き税額控除: 所得が一定水準以下の層に現金を給付する「負の所得税」の概念を取り入れる。
- ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI): 就労の有無に関わらず一定額を支給する仕組みを検討し、社会の激変に対応できるカーブ(支給基準)を用意しておく。
● エネルギー供給の全力確保
AI・AGI駆動型経済を支えるための電力を安定供給する。
- 電力需要予測の修正: 既存の計画に対し、AI活用による需要増(約15%の不足予測)を織り込んだ計画へ更新。
- 多様な電源の活用: 原子力発電所の再稼働、火力発電の最低限の維持、都市部の屋根を活用した太陽光発電の推進。
- 海外データセンターの検討: エネルギー価格が安く、信頼できる第三国でのデータセンター設置も視野に入れる。
● 文化・芸術への投資
労働が生きがいとならなくなる「ポストAI時代」を見据え、人間のアイデンティティを支える文化を振興する。
- 生きがいの再定義: 知的労働でAIに勝てない時代においても、豊かな人生を全うできるよう、文化の「豊穣さ」を国家として守り、投資する。
ここに、安野氏の思想の芯を感じました🎨
おわりに──10%の未来に、100%で備えるという考え方
AGIが本当に5年以内に来るのか。
それは誰にも分かりません。
でも安野氏は、こう締めくくります。
「たとえ確率が10%でも、影響が国家レベルなら、準備しない理由はない」
投資でも、老後でも、災害でも。
「来なかったら安心」「来たら大惨事」より、
来ても、来なくても困らない準備が、いちばん賢い。
AGIの議論は、遠い未来のSFではなく、
私たちの生活、そして「生き方」そのものの話なのだと、改めて感じています。





