2025年4月現在、S&P500をはじめとする株式市場は大きな波に揺れています。上がったかと思えば翌日には大きく下げ、投資家心理も振り回されがちです。全体としても下落傾向が続き、現時点でS&P500は最高値から16.8%、年初からは15.7%の下落(いずれも円換算「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」より算出)となっています。
こうした相場環境では「今は様子見か…」と躊躇したくなる気持ちもわかりますが、実はこんな時こそドルコスト平均法によるインデックス投資の効果が発揮できます。
不確実な相場でも頼れる投資法
インデックス投資家にとってのバイブルのひとつ、『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著)では、ドルコスト平均法の有効性がわかりやすく解説されています。
この方法は、毎月、一定額をコツコツと投資することで、価格変動によるリスクを軽減する手法です。相場が下がれば多く買い、上がれば少なく買う──それだけのことですが、長期的には驚くような効果を発揮します。
ドルコスト平均法の威力:2つのケース比較
ここで、『ウォール街のランダム・ウォーカー』に記載されている、5年間にわたって毎年1,000ドルずつ投資した2つのケースを比べてみましょう。総投資額はどちらも5,000ドルです。
※実際に投資する際は毎月(または毎日)購入しますが、分かり易さの観点から年に1回購入としています
ケース1:相場が激しく変動した場合
年 | インデックス価格 | 購入口数 |
---|---|---|
1年目 | $100 | 10口 |
2年目 | $60 | 16.67口 |
3年目 | $60 | 16.67口 |
4年目 | $140 | 7.14口 |
5年目 | $100 | 10口 |
合計 | 60.48口 |
株価が2年目・3年目に大きく下落、4年目に急騰するも、最終年の5年目に出発時点の価格にとどまるケース。
ケース2:相場が安定して右肩上がりの場合
年 | インデックス価格 | 購入口数 |
---|---|---|
1年目 | $100 | 10口 |
2年目 | $110 | 9.09口 |
3年目 | $120 | 8.33口 |
4年目 | $130 | 7.69口 |
5年目 | $140 | 7.14口 |
合計 | 42.25口 |
こちらは堅実な上昇相場で、最終価格も当初価格の1.4倍である140ドルになるケース。
相場の荒れたケースの方が利益が大きい!?
さて、上記のケース1とケース2で、どちらのケースの方がリターンが大きいと思いますか?
意外かもしれませんが、リターンが大きかったのは価格が激しく変動し、最終的に当初の株価に留まるケース1でした。理由は単純。価格が下がった時に多く買い、結果として多くの口数を購入出来たからです。
ケース1: 60.48口 × 最終年度の株価100ドル = 6,048ドル
ケース2: 42.25口 × 最終年度の株価140ドル = 5,915ドル
バフェットの分かり易い例え
ウォーレン・バフェットも、ドルコスト平均法の本質を次のように語っています。
「もし死ぬまでハンバーガーを食べたいなら、牛肉の価格は高い方がいいですか?低い方がいいですか?」
この問いには、誰もが「低い方がいい」と答えるでしょう。
しかし次の問いになると、多くの人が間違えます。
「今後5年間、収入の一部を投資に回します。株価は高い方がいいですか?低い方がいいですか?」
実際には、安い価格で買い続けられる方が将来的なリターンが大きくなるのに、なぜか多くの人は株価の上昇を喜び、下落を恐れます。
これは、ハンバーガーを買いに行って値上がりを歓迎するようなもの。本末転倒なのです。
注意点:続ける勇気が求められる
ドルコスト平均法の最大のメリットは「どんな相場でも買い続けることで平均購入単価が下がる(多くの口数を購入する)」点にあります。しかしこれは、途中で投資をやめないという前提があってこそ成立します。
株価が暴落し、新聞が悲観論に包まれていても、あなたが「これはバーゲンセールだ」と思って投資を続けられるかがカギです。
まとめ:荒れた相場は、むしろチャンス
今のように相場が不安定な時期は、精神的にも揺さぶられるものです。しかし、そんな時こそ冷静に、機械的に、積立を続けることで、将来的に大きなリターンを期待できます。
ドルコスト平均法は、相場を読む必要も、タイミングを測る必要もありません。「続けること」が最大の戦略なのです。