5月8日の日本経済新聞の「新築マンション 薄まる投資妙味」という記事を読み、非常に興味深く感じました。この記事では、首都圏の新築マンションにおけるPER(株式投資で使われる価格収益率)が過去最高の水準に達していることが取り上げられていました。
PERとは何か?
PER(Price Earnings Ratio)は、株式投資の世界では「株価 ÷ 一株あたりの利益(EPS)」で求められますが、不動産においても似た考え方が使われます。今回の記事では、新築マンションの購入価格を年間の想定賃料で割ることで「何年で元が取れるか」を示す指標として紹介されていました。
例えば、PERが29倍というのは、「同じ賃料水準が続けば、29年で初期投資を回収できる」という意味になります。
異常とも言える水準に
記事によれば、首都圏マンションの平均PERは29倍。特に高いエリアでは、白金高輪が53倍、表参道52倍、麻布十番44倍と、人気の都心部ではさらに高い数値となっています。
過去を振り返ると、リーマンショック前のミニバブル(2008年)でもPERは22倍程度だったとのこと。今回の29倍という数値は、かつてない「割高感」を示していると言えるでしょう。
なぜここまで上昇しているのか?
PERは「価格÷賃料」で求められるため、価格が上がるか賃料が下がれば上昇します。足元では賃料も上昇しているものの、それ以上のペースで新築価格が跳ね上がっているとのことです。
具体的には、2024年の新築マンション価格は前年比17.7%の上昇。一方で、賃料は3.2%の上昇にとどまり、価格の上昇が圧倒的に勝っている状況です。
その背景には、実需だけでなく、海外投資家や国内の富裕層といった実需外の買い手層の存在もあるようです。
これは新築だけでなく、中古マンション市場にも共通しているとのことです。
このまま上がり続けるのか?
株式市場ではPERが過去のレンジを超えると、「株価が下がる」か「企業の利益が増える」ことで調整が入ります。同様に、不動産市場にも調整の兆しがあるかもしれません。
記事内の専門家は、「生活者の懐は厳しくなっており、ここから一層の賃料上昇は見込みにくい」とコメントしており、PERの調整はマンション価格の下落によって進む可能性を示しました。
個人的な感想
PER29倍という水準、株でいえば成長期待の高い新興企業並みの評価です。記事ではエヌビディアのPERが24.2倍と紹介されていました。株と不動産ではPERの考え方が異なるのかも知れませんが、現在のマンション価格にはやや違和感を覚えました。
今後は日銀の利上げが進むと予想されています。金利が上がればローン負担も増し、買い手の手控えによって価格調整が起こる可能性もあります。今後の動向をしっかりと見守っていきたいと思います。