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株主還元とは?配当・自社株買い・DOE・累進配当・配当性向までわかりやすく解説!

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2023年、東京証券取引所が上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営」を求めるようになってから、日本企業の経営姿勢は少しずつ変化してきました。その中で注目されるようになったのが「株主還元」です。

今回は、投資初心者の方でも分かるように、「株主還元」の基本的な仕組みと代表的な手法について、やさしく・丁寧に・計算例付きで解説します。


株主還元とは?

株主還元とは、企業が株主に対して利益の一部を返す行動のことです。企業が稼いだお金(利益)の使い道はさまざまですが、株主にも利益を分配することで、株を持っている人(株主)に報いることができます。

代表的な株主還元の方法は、次の2つです:

  • 配当:現金を直接株主に渡す
  • 自社株買い:自分の会社の株を市場から買い戻す

この2つの合計を「総還元」と呼び、企業がどれくらい利益を株主に還元しているかを示す指標として「総還元性向」が使われます。


配当:利益を現金で株主に渡す

企業が得た利益の一部を、1株あたり〇円という形で株主に現金で支払うのが配当です。

【計算例】

あなたが100株持っている企業が、1株あたり40円の配当を出すとします。
40円 × 100株 = 4,000円 が配当金として割り当てられます。

◉ 配当性向とは?

配当性向とは、「企業が稼いだ利益のうち、どれくらいを配当に回しているか」を示す指標です。

配当性向 = 1株あたり配当金 ÷ 1株あたり純利益 × 100

【計算例】

  • EPS(1株あたりの利益):100円
  • 配当金:40円
    → 配当性向 = 40 ÷ 100 = 40%

つまり、その年に稼いだ利益の40%を配当として還元します。
よって、利益が増えれば配当も増えますが、逆に利益が減れば配当も減ってしまうという特徴があります。

◉ 株主資本配当率(DOE)とは?

DOE(株主資本配当率)は、配当金を「利益」ではなく「株主資本(会社の持ち主としての資産)」と比較する考え方です。

DOE = 1株あたり配当金 ÷ 1株あたり株主資本 × 100

株主資本は毎年大きく変動しないため、安定した配当政策を考える上で役立つ指標です。

【計算例】

  • 配当金:50円
  • 1株あたり株主資本:2,500円
    → DOE = 50 ÷ 2,500 = 2.0%

赤字(その年の利益がマイナス)であっても、株主資本が減らなければ配当は維持される可能性があります。

【株主資本配当率(DOE)を宣言している企業例】

  • 野村不動産(3231):2025年4月に策定した長期経営方針において、総還元性向40~50%、年間の配当金についてDOE4%を満たす水準を下限とする財務指針を設定しています。(公式website)。
  • キリンホールディングス(2503):2025年度以降は、より安定的かつ持続的な配当を実現するためDOE(連結株主資本 配当率)5%以上を目安とし、原則として累進配当を実施する配当方針へ変更いたします。(公式website)。

◉ 累進配当とは?

累進配当は、「配当金を減らさず(現状維持)、できる限り増やしていく」という考え方の配当方針です。企業は、中長期的に株主へ安定的に利益を還元する姿勢を示すために、この方針をとることがあります。

→ 利益が増えれば配当も増え、利益が減っても配当は原則維持されます。

【計算例】

  • 昨年の配当:60円
  • 今年の利益が減ったけど配当は60円を維持、または利益が増加したため65円に増配
    → 株主にとっては安心感があるため、長期保有の魅力が増します。

【累進配当を宣言している企業例】

  • 武田薬品工業(4502):毎年の1株当たり年間配当金を増額または維持する累進的な配当方針を採用しています(公式website)。
  • 三菱商事(8058):2025年度より開始された「経営戦略2027」においても、「累進配当」の方針を継続致します(公式website)。

自己株式取得(自社株買い):株数を減らして1株の価値を上げる

自社株買いとは、企業が自分の会社の株を市場で買い戻すことです。買い戻した株は消却(無効化)されることが多く、その結果、発行済み株式数が減ります

株数が減ると、利益を分け合う株主の数が減るので、1株あたりの利益(EPS)が増加します。

【計算例】

  • 純利益:100億円
  • 発行済株式数:1億株 → 自社株買い後:9,000万株

→ EPSの変化:

  • Before:100億円 ÷ 1億株 = 100円
  • After :100億円 ÷ 9,000万株 = 111円

EPSが上がると、株価評価の指標(PERなど)に好影響を与えるため、株価上昇のきっかけになることもあります。


総還元性向:配当と自社株買いを合わせて考える

企業の株主還元の姿勢を測るために、「配当」だけでなく「自社株買い」も加味して考えるのが「総還元性向」です。

総還元性向 = (配当額+自社株買い額)÷ 当期純利益 × 100

【計算例】

  • 純利益:200億円
  • 配当:100億円
  • 自社株買い:50億円 → 総還元性向 = (100+50)÷ 200 = 75%

このように、企業がどれだけの利益を株主に還元しているかをより広く捉えることができます。


株主還元方針はずっと続くとは限らない

ここで注意点です。

企業の配当方針や還元方針は、多くの場合「中期経営計画(3〜5年)」の中で示されます。つまり、今掲げられている方針が次の中期計画で変わることもあるということです。

ですから、長期投資をする場合は、毎回中期経営計画やIR資料をしっかり確認することが大切です。


まとめ:株主還元を知ることは、企業を見る目を養うこと

企業が利益をどう使うか。その使い道に「株主還元」が含まれていれば、それは株主を大切にしている企業である証とも言えます。

配当や自社株買い、DOEや累進配当など、少し難しく感じるかもしれませんが、基本を押さえれば誰でも理解できます。

これからの投資判断にぜひ役立ててください!

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Kiyoppi
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こんにちは!「50代からのセミリタイヤ生活!」へようこそ。 金融系システムエンジニアとして、長年忙しい会社員生活を送ってきました。仕事に追われる毎日を過ごしていたためお金を使う時間がほとんどなかったこと、また自分では意識していなかったものの節約志向が高かったこと、加えて20代から行ってきた株式投資での幸運もあったことから一定程度の資産を築くことが出来ました。 50代半ばを迎え、もう少し自分や家族のための自由な時間を持ちたいという思いから定年前に会社員をやめ、現在は個人事業主としてゆるめにお仕事を行っております。 ここでは、実際にセミリタイヤ生活を始めた私が、実践してきた節約・投資のノウハウや、セミリタイヤ後の生活について発信してきたいと思います。 ※投資は自己責任です。ご自身で責任をもってご判断をお願いします。 https://x.com/kiyoppiX
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